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奨励賞

英国における観光地整備と都市農村計画の役割

−観光計画的視点からみたトーベイ・ローカル・プランの評価−

 

長谷川明弘

 

要約
良好な観光・リゾート地を整備していくためには、優れた観光・リゾート計画(民間デイベロッパーによる計画や自治体による非法定計画など)が必要であることはいうまでもない。しかしながら、さらに根本的にいえば、都市計画法をはじめとする基本的な法定土地利用計画の良否が問題となる。たとえば湯沢町のリゾートマンション群は乱開発の象徴的な存在となっているが、法律的には合法的に整備されたものである。つまり、合法的ではあっても観光計画の視点からみると劣悪な開発なのである。好ましくない観光・リゾート開発が法的には合法である、というのは問題である。理想としては、法律的な合法性と観光計画的な優秀性が一致するべきである。
我が国の都市計画が抱えているこうした問題点に対しては様々な批判が行われている。しかし、観光サイドからの批判や提言はこれまで意外に少なかったのではないか。
一方、英国の都市計画制度(都市農村計画法)については様々な研究が既にあり、計画許可制度に基づく開発コントロールが紹介されている。観光計画の立場からみても、英国の美しい町並みや田園がどのように維持され、乱開発がどのように規制されているのか興味深い。
こうした問題意識から、本研究は英国の観光・リゾート地整備における都市農村計画の役割を分析することを目的とした(1章)。
2章では英国の都市農村計画の概略について簡潔なまとめをしている。3章では都市農村計画が観光・リゾート開発に果たす役割について一般論的な事柄を整理している。4章では、デボン州トーベイ市を事例として、デボン州ストラクチュア・プラン及びトーベイ・ローカル・プランの内容を分析し、都市農村計画と観光リゾート整備の関連性を具体的に検討した。5章では日本と英国との比較を試み、結論と考察を加えている。
結論的には、本当の意味でのマスタープランを持つ英国と、計画体系が複雑で「マスタープラン的なもの」しか持たない日本との基本的な相違点が浮き彫りとなった。そして、英国ではマスタープランの中に観光計画的土地利用計画が明確に位置づけられ実現化されているのに対し、我が国では法定土地利用計画内における観光計画の所在が曖昧であり、実現化も不確実であることを指摘できた。厳格な規制力とデザインコントロール機能を持つ英国と、一般的に規制が緩やかでデザインコントロール機能を持たない日本とでは、観光・リゾート開発の質に大きな違いが現れ得るといえる。

 

 

 

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